むかし、村上龍に夢中だったころ
辛口の村上龍の本を読むのは気合がいったけど、そのころはわたしも若かった。
ぶっ飛んだ小説も恋愛小説も真面目な本も、手当たり次第に読める元気があった。
仕事上での付き合いだったのが、ひょんなことから村上龍の話で盛り上がり、お互いに本を借りたり貸したりの仲になったSさん。自分では選ばない本を読むようになって、村上龍の世界がグーンと広がった。
話題になった本はとにかく早く読みたい!
話題になれば誰もが読みたいから、図書館に行ってもいつも貸し出されてしまっている。
(あーもう、待てない)
と、本屋に駆けつけた。
読んでしまうとSさんと感想を語り合うのが楽しくてたまらなかった日々。
そんな中…
2005年に『半島を出よ』が世に出た。
衝撃的だった!
どのくらい衝撃だったかというと『半島を出よ』以後、他の本の影が一気に薄くなったと感じるくらい。
残酷な(日本人にはね)描写に息を呑みながら、指の間から覗き見してでも見ずにはいられないような本だった。
(小説の中の話だよー)
と頭では分かっているのに、もしかしたら現実に起こるかもしれないと感じる怖さが半端なかった。まるで映画を見ているような臨場感と、俯瞰しているような描写。
上下巻を一気に読んだわたしは、まよわずまた最初から読み返した。
Sさんとわたしは、二人して村上龍に恋しているように夢中になって語り合ったっけ…
そんなSさんとの交流もなくなって、ずいぶんと年月が過ぎた。
いつの間にか村上龍の本を読むこともなくなっていた。
今『半島を出よ』を読むパワーは…ないだろうなー…
ある日、何気なくつけたテレビに龍さんが出ていた。
……
ショック!
頬の肉がたるみ、鋭い舌鋒はどこにいった?
となりに座る小池栄子さんは今や大女優。むかしの”ちょっと頑張って龍さんと合わせています”という感じがなくなって
(あー…なんかーいい歳のとり方をしてるー)
…時の流れの残酷さ…
対象的なふたりにぼんやり見とれていて、内容はぜんぜん憶えていない。
だけど、龍さんはずっと本を出し続けていたんだね。
粛々と本を書き続けていた村上龍。
わたしもいろんなことに抗いながら頑張って生きてきた。
だから、
見た目?
「そんなの関係ねぇ!」
って小島よしおのように叫んでみようっと。