森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

ホラーから恋愛小説へ『美しい時間』

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墓地を見おろす家小池真理子を知ったけど、ホラー小説に興味があるわけではなかった。見えない何かに引き寄せられて手に取ってしまった本が、たまたまホラーだったというわけ。

 

図書館に行って小池真理子のコーナーに並んでいる本を眺めてみる。

ホラー小説を主に書いている作家さんだと思ったら、恋愛小説がたくさん並んでいた。 

後日、本屋さんでという本を購入した。

 

読み始めると何ページも読まないうちに本の中に引き込まれていくのは前と同じ。

物語で描かれるのは、わたしの日常とはかけ離れた世界。

 

迷ったあげくに選んだ本が面白くなくて、忍耐で読んでいるうちにどんどん面白くなっていく本もあれば、最後まで読んでも徒労感だけで終わる本もある。

 

 

はすごかった。

小池真理子の読ませる力に圧倒されて、次はどうなるんだろう…と斜め読みしてでも先を急ぎたいくらい夢中になった。だけど、あっという間に読んでしまうには余りにももったいと思った。一日に読むページを制限して、次の日ワクワクする気持ちを味わいながら読んだ。

 

そういう訳で』を読むのにかけた時間は、ふだん読んでいるのよりもずっと長い時間がかかった。読み終わると、今度は結末が分かっているので最初に戻って楽しみながらどんどん読み進めた。

二回三回と読み直すと、その度に印象が変わる。内容が深く分かっていくだけでなく、自分の中で何かが成熟していくのだろうか…と不思議な感覚を味わう。

 

 

久しぶりにを本棚から取り出してみる。

買ってから二十年以上経った本は黄色く変色していた。パラパラと斜め読みでページを繰っていく。急いで読んだらもったいないと思ったのは憶えているけど、あの時のような興奮はない。

(わたしも歳をとったからなー)

 

本棚には以外に

天の刻

午後のロマネスク

薔薇いろのメランコリア

美しい時間

が並んでいる。断捨離の世代になって本はほとんど処分した。捨てることができなかった数少ない本たち。ホラーから始まったけれど、小池真理子なら断然恋愛小説だと思う。

 

最後に読んだのは村上龍との共著美しい時間

誕生日か何かでプレゼントされた本。大きさも装丁も読んでいる時に現れる挿絵もおしゃれで、題名通り美しい本だ。

この本は時々本棚から取り出して眺める。なんだかとても豊かな気持ちになれる気がする本なのである。