長らく本から遠ざかっていたのに、ひとたび読み始めるとたちまち生活の一部になった今日このごろ。
小池真理子の本を立て続けに六冊読んだ。
ところが、
思わぬことになった。
このたび最後に読んだのは『無花果の森』
主人公は、地味で暗くて薄幸が服を着て歩いているようなイメージの女性で、小池真理子の小説にしては珍しいなと感じた。
そのせいかどうかは分からないけど、いつものようなわくわくする読み方できなかった。
(なんか引っかかる…)
どこが気になるのか判然としないまま、必死で活字を追っているような感じ。
情景を説明する描写に少しだけイラっとして読み進んだ。
たぶん初めてのことだけど、斜め読みしてしまった。
(ああー、その説明はいいから先を知りたい…)
これまでは、言葉の選び方も筋書きも舌を巻くほどうまい!と感じながら読んだものだった。
ページを繰ってまだ状況の説明だと分かるとダーッと斜めに読んで、次の展開のところまで急いだ。
罪悪感を感じながらそうした。
(小池真理子ファンがこれでいいのかい?)
すべてが完璧だと信じていた小池真理子の小説で、こんなことをしてしまうじぶんにびっくりした。
(これはいったい…どういうことなんだろう…)
読み終わってみれば『無花果の森』は、ハッピーエンドだったことと、何だかんだと言っても小池真理子の本である。それなりに充実した気持ちではあった。
ただ、読んでいる途中のじぶんに思いに答えが見つからないまま次の本を読む気にはどうしてもなれず、一旦小池真理子はお休みすることにした。
図書館でブラブラと本棚の間を巡りながら、次に読む本を探した。
桐野夏生のところで足が止まった。
『OUT』を読んで、その後しばらくは桐野夏生の本ばかり読んでいた時期があった。
どんな本があっただろうかと考えてみるけど、『柔らかな頬』『グロテスク』『東京島』くらいしか思い出せない。
書いてあることが難しいと感じるようになって、読まなくなっていったと記憶している。
難しいと倦厭(けんえん)した桐野夏生を、この歳のわたしはどう感じるのだろう…
そんな興味で二冊借りてきた。
さて……