”水引”(みずひき)
って、どんな花かわかりますか?
赤い花びらがまっすぐに並んでいて、可憐でけなげ。
小さな小さな花だから雑草に紛れてしまいそう。
でも、わたしは見逃さない。
すごいエネルギーをまとって迫ってくる。
大好きな花。
庭の中央の花壇の中で、今年は水引がこれまでになくたくさん咲いた。
それが見たくて家事を中断して庭に出る。
……
小さな花を見つめるわたしは秋を見ている…
秋…
たとえば人生のね…
幸せに暮らしていたのはつい五年くらい前のことだったのに。
大病をして奇跡的に助かったその矢先、今度は大切な家族を亡くした知人。
心配するわたしに
「落ち込んでなんかいられない!」
と、気丈に言っていた。
だけど…
とぼとぼと歩いている知人を見かけた。
歳をとってから襲いかかる試練は、どうやって乗り越えていけばいいのだろう。
日々暮らしていけるだけ、まだいいのかな。
冬ではなくてまだ秋だから、気がつかないふりをすればいいかな。
当たり前のことだよと、何度も何度もじぶんに言い聞かせながら生きていくかな。
肩を落として歩く知人の姿に、冬がひたひたと迫る秋を想った。
庭は秋ざかり