森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

無花果(いちじく)

 

果物で一番好きなのは洋梨

スーパーで見かけて、どうしても買わずにいられない時に

「エイッ!」

と、奮発することはある。

 

大好きだけど簡単には手が出せない。

「この時間だけの特別価格ー!」

なんてことばに踊らされて買ってしまうと必ず後悔が待っている。

(あー…買わなきゃよかった…)

と、何度後悔したことか…

 

それなりのお金を出さないと、美味しい洋梨にはありつけません。

じぶん自身にプレゼントして、罪悪感を感じない誕生日にあればいいんだけど…

残念ながら、その頃は旬ではない。



洋梨ほどではないけど、無花果も大好き。

こどもの頃、無花果はあちこちの路地でたくさん見かけた。

イカ無花果が、日常目にする果物だった。



生協のカタログに無花果の苗が出ているのを見て、ふとこどもの頃に見ていた無花果の木を思い出して購入した。

十年ほど前のこと。

無花果なら、簡単に育てられるかも知れない…)

15センチ位の可愛らしい苗が届いた。

早速、川に面した方の庭に植えた。

 

無花果の成長は驚くほど早い。

みるみる大きくなっていく無花果の木。

三年ほど経った頃には、

(そろそろ、実をつけてもいいんじゃない!)

と、私の背丈ほどになった無花果を熱い視線で見つめた。



だけど、葉っぱは元気に育つけど一向に実をつける様子はない。

次の年も、その次の年も元気に育つのは葉っぱばかり。

(やっぱり素人には無理かー…)

季節が移り、葉っぱが落ちて太くなった幹を眺めるのにも飽きた。



昨年のこと、川を眺めていて、大きな葉っぱの陰になっている無花果を見つけた!

(あれーっ!実がなってる!)

ちょうど食べごろの美しい赤むらさき。

 

わくわくドキドキしながら実を摘んで、家に駆け込んだ。

(美味しーい!)

紛れもない無花果の味に感激した。

 

今年も無花果の実がなっている。

去年は三個ほどだったけど、もっとたくさんなっている。

なにせ、葉っぱが元気に繁っているのでよく見えない。

植えてから十年もの月日が流れた。

……

 

無花果だけではない。何事も結果を出すのは、時間がかかる。

何かを始めたら、とりあえず続けよう。

淡々とね。

雑音は聞こえても、自分の信ずることを胸にね…