森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

問題はそれ?!…

 

玄関のドアがガタギシになったのはいつからだろう…

閉めようとすると…抵抗するんですよ。

ガタガタガタ、ギシギシギシ

引っ張っても閉まらないから

「ふんぐぅぅー…」

と、力をこめる。

ガッシャーン…大きな音をたてて閉まる。

 

 

(だれか直せる人いないかなぁ…)

いっつも考えていた。

 

そうだ!!

以前勤めていた会社の改装をしていた大工さんの顔が浮かんだ。

 

連絡するとすぐに駆けつけてくれた。

だけど(案の定)ドアを開けたり閉めたり眺め回していたけど原因は分からないよう。

何日かして

「ドアを交換したほうがいいかも…」

と見積書を持ってきた。

 

!!

金額を見て驚いた。

五十万を超えるとは思ってなかった。

見積書を見つめて呆然としているわたしに一生懸命説明する大工さん。

(たかがドア一枚に…?)

(一番安いドアでいいんだけど…)

(工事費込みだとそうなるのかな…)

(古い家に似合わないかも…)

・・・・

 

頭の中ではすでにどうやって断ろうかと、思考がシフトしている。

「ちょ、ちょっと考えます」

一旦帰ってもらった。

 

その後何度も連絡があった。

そのたびに思い切って頼もうかな…

いやいや優先順位はドアではない…

そんな大金使うならほかにもやりたいことがある。

 

決心がつかない。期待させるのも胸が痛い。

電話をもらうのもつらくなってきたある日、思い切って断った。

 

だけど、問題は解決していない。

ドアを閉めるたびに、ギシギシうなるドアがうらめしい…

無理やり閉めるから、家が揺れる。

ため息つきながら過ごしていたある日、突然ひらめいた。

 

(鍵穴にKURE 5−56でもさしてみようかな…)

物置から探し出してきた赤い缶。

おもむろに蓋を開けると、鍵穴にプシュプシュ!

えーい!この際だ!もっとさしちゃえ!プシュプシュ!

 

 

(さし過ぎたらまずいかな…)

ハッと我に返り手を止めた。

 

台所に戻ったわたしはコーヒーを飲むためにお湯を沸かし始めた。

コーヒーを飲み終わるとドアのことを思い出して玄関に戻った。

ドアを開けて閉める。

もう一度開けて閉める。

何の抵抗もなくドアが開閉してるじゃない!

 

誰もいない玄関で雄叫びをあげた!

「問題はそれだったのかーい!」