ある日のウォーキング中の時のこと。
最近は、お互いに忙しくて息子と一緒にはなかなか歩けないのだけど、珍しく二人で川の横を歩いていた。
じぶんでは気が付かないけど、歩いていると自然に息子のそばに引き寄せられる。
「近い!」
「えっ?」
息子のひと言に、影武者のようにぴったりとくっついて歩いているのに気がついた。
あわてて、三歩ほど下がって距離を取る。
(べつに近くても、いいじゃん!)
こころの声は口にはだしませんよ。
川では、時どきハゼだかフナだか分からないけどピョーンピョーンと飛んでいる。飛ぶ瞬間を見ると、ものすごく得した気分になる。
飛んだ魚が立てる水しぶきに、ハッと目をやるとすでに水の中。
(うーん!残念!)
黙々と歩いている心の中で、そんなことを考えているわたし。
前を歩く息子は何を考えながら歩いているんだろう…
川の幅は十メートルくらいだろうか。
向こう岸の道を、くすんだピンク色の軽自動車がやってきた。
妙にゆっくりと走っているなーと思って見ていると、静かに停車して女の人が降りてきた。
歩く以外には何もすることがないわたしは、じっと観察する。
女の人はまわりを見回すと、助手席のドアを開けて白い大きな袋を取り出した。
次の瞬間、袋を川に投げ込んだ!
「あ−っ!!」
びっくりして、立ち止まった。
「川に何か捨てたよ!」
わたしの大声に息子も立ち止まって対岸を見つめた。
わたし達の騒ぎには目もくれず、じっと袋を見つめたその人は振り返りつつ車に乗り込んだ。
「ちょっと、ちょっとー!何を捨てちゃってるのー!」
車の中でじっとしている女の人に
「わたし達、見てましたよ!」
アピールをするように腰に手を当て、立ち止まって車を凝視した。
わたし達に気がついているかどうかは分からない。しばらくすると静かに車は動きだした。
ゆっくりゆっくりと進んでいる。
(何かを確かめているのだろうか)
(目撃されてしまったから、対策を考えているのかな?)
ゆっくりと走り去る車の行方をじっと見つめるわたし。
やがて、車は見えなくなった。
川の中には白い袋がポツンと浮かんでいる。
(何を捨てたんだろう…)
ウォーキングを再開すると、いつものように川から離れ神社を通り抜けて、同じ川の下流の方に出た。
そこに白い袋がプカプカと、流されてきた。
(切断された何か怖いものが入っているかもしれない…)
心のなかに黒い不安を抱きながら歩いたわたしは、どうやらただのゴミらしいと分かってホッとした。
しかし、指定されたゴミ袋で出せばすむものを、人目を避けて何故あんな捨て方をするんだろ。全く意味がわからない。
それから、一ヶ月位は遺棄事件の報道がないかどうかの注意も怠らなかった。
やっぱりゴミの不法投棄だったのか…
それにしても愛犬のフンの置き去りといい、ゴミの不法投棄といい、どうにかなりませんかね。