森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

謎のリングの正体…

 

朝六時、玄関のドアを開けた息子が振り返って

「どうする?」

と聞いた。

肩越しに外を覗くと、静かな雨が降っていた。

静かでしっかりとした雨。

 

「歩こう!」

いろいろ考えずに結論を先に言った。

 

というわけで傘を片手にウォーキングに出た。

朝六時の空は明るくはないけど、季節が移っているのは感じる。

今日は雨のせいで漆黒の空が逆戻り。

その中を黙々と歩く。



元気を装ってるけどきついことが増えるばかり。(年相応…)

雨の日の神社の階段を転ばずに登り切る自信がない。

神社とは逆の道を気が向くまま黙々と歩いた。

 

いつもの道じゃないので、距離感がつかめない。

(思ったより歩き過ぎたかも…)

(ちょっと疲れた…)

 

ようやく家のそばまで帰ってきた。

橋を渡れば我が家はすぐそこ。

そのとき

”ガシガシ”

”ギーギー”

(何の音?)

何だか分からない音がする。

暗がりの橋の真ん中にしゃがみこんでいる黒い人影!

一心不乱に地面に文字を書いていた。

 

(もしや!)

(こ、これは…あのリングを書いたひとじゃないか…)

橋を渡り切って角を曲がったところで息子と顔を見合わせた。

「見つけたね!」

 

放置されたワンちゃんのウンチを丸く囲んで

「マナー違反」

「僕を家に連れて帰って!」

の文字。

(そうだ!そうだ!)

と共感したのは何年前だったか…

誰がしているんだろう…と長いこと謎だったリングの主は見知らぬ人だった。

 

今日のメッセージは

「誰だ!」

「マナー違反」

その中心に大きなウンチ。

 

今の時代はワンちゃんも家族と同じように家の中で過ごして可愛がっているのに、なぜウンチだけは道端に放置して帰るんだろう…。

不思議な話。