森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

それなりの珈琲

 

お湯を沸かして、コーヒーカップを温める。

ケトルはもう二十年以上前に買ったもの。

珈琲用だから注ぎ口が細くて、容量も一リットルしか入らない。

家庭の台所で使うにはちょっと不便だけど、

(まっいいかー…)

で使ってきた。

 

豆をフィルターに一杯分入れる。

香りを楽しんでいるこの時間も大事。(時間に余裕があればね)

 

仕事が終わって飲む一杯の珈琲。

(この一杯のために生きているんじゃないかしらん…)

と思うくらい…幸せ…

 

…飲み終わったあと、魔法が解けたように現実の世界に引き戻されるけど…

 

美味しい珈琲の評判を聞くと、せっせと買いに行った。

家の近くに焙煎だけしている店があるので、そこには一ヶ月に一回くらい通っていた。

ポイントをためるのも楽しみだった。

 

ところが…

ところがである。

ある日、

ふと、気がついた。

わたしは美味しいか不味いかはわかるけど

珈琲を淹れるのは下手くそだ…

 

自分で淹れた珈琲は香りも味もまあそれなりに珈琲だけど…

それなりの域を越せない。

同じ豆なのに

(なぜ…?なぜなの…?)

美味しく淹れる友人を羨望の眼差しで見つめる。

 

とは言っても、珈琲はやっぱりこころのオアシス。

今日もわたしは懲りずに美味しさをめざす!