森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

流れ星 ☆彡

外はまだ暗い。

時計を見ると四時前。

起きるには早いけど、目が覚めてしまった。

 

コロナ感染で仕事には行けない。

起きるのに、早いも遅いもないのだった。

昼も夜もボーッと寝て過ごしていることを思い出してひとりで笑った。

 

窓をそーっと開けてみる。

漆黒の空に散らばっている無数の星。

(あぁ……)

思いもかけない美しさが広がっていた。

 

街灯の灯りが届かないこの窓から見る空は、点滅する小さな星たちが主役だ。

(コロナになったから出会えた景色だね)

そんなふうに考える能天気さが今は大事。

 

ぼんやり見ていると、突然右から左に光が流れた。

……

(あ、流れ星…)

気がついたときには、何事もなかったように漆黒の闇に戻った。



長いこと生きてきて流れ星はたくさん見た。

たくさん見た…というのは記憶されていないということだ。

記憶に残っている流れ星はふたつ。

 

子ども達がまだ幼かったころ、友人四家族で標高千メートルくらいの山にキャンプに行った。夜中にテントから出て空を見上げると、星がビュンビュンと流れていた。

………

星が流れ、星が降り注ぐ!

圧巻の天体ショー。



もうひとつは、高校生になった息子の学校から呼び出された夕暮れ時。

帰り道、担任の教師から告げられたことばを反芻しながらハンドルを握っていた。

目の前のことしか見えていなかったわたしは、担任のことばを思い出して涙ぐんた。

信号待ちで空を見上げたわたしの目に、突然飛び込んできた大きな光…

流れ星だった。

あまりにも大きな流れ星に

(これは何かの暗示だろうか…)

と、思ったっけ。

 

あれから何十年もの時が流れた。

その中で大切なものをたくさん見つけた。

人生やり直してもこれまで以上のがんばりはできない…かな…

 

コロナに感染したから見れた今回の流れ星は、三つ目の記憶として残るのだろうか…

それとも記憶されないたくさんの流れ星の中に埋もれてしまうのだろうか…

 

それは、未来にならないとわからない…