ふと、気がついた。
最近、本を手にしていない…
(これは、いかん!)
本棚へ向かった。
何年かに一度、本棚の整理をする。
ここに並んでいるのは捨てられなかった本たちだ。
もう読まないだろうと思った本は容赦なく処分する。
ずいぶん経って
(あー…手放さなきゃよかった…)
と後悔したことは数しれない。
(しかたがない…)
(そのときはそうしたかったんだから…)
順番にながめるわたしの目が止まった。
「ほら!ほら!こっちだよ」
と言われた気がして…
”チョコレート革命”《俵万智》
…二十五年前の本だ。
大切に思っていたのが分かる装丁の美しさ。
手に取るとアッという間に時がさかのぼり、四十代のわたし。
茶色になった本をそっと開いてみる。
年月は残酷だな…
表紙の美しさとは裏腹に、茶色っぽく変色している。
この本の中に短歌が何首収められているか数えたことはないけど、どれをとってもこころに刺さるものばかり。俵万智じゃなくてわたし自身が、こころの痛みに悶えるような気持ちで読んだことを思い出した。
茶色に染まってしまうほどの時間が経っても、そんな記憶がよみがえる強烈な本。
四十代のわたしはそのころ何を考え、何を選び取りながら生きていたのだろう…
過ぎ去っていった長くて短い年月が走馬灯のようにあたまの中を流れていった。
二十五年後の”チョコレート革命”を開いたまま、遠い日に想いをめぐらす…