森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

お姉さんのレモン

 

姉の遺したレモンが黄色くなった。

(黄色くなるまで待たなければいけなかったんだ!)

と、今ごろ気がついた。

去年もその前の年も、まだ緑色の状態で収穫したので、全然ジューシーじゃなかった。

(やっぱり素人じゃ育てるの難しいねー)

なんて思っていた。

 

レモンは目の端にとまりながら、慌ただしさに紛れて日々が過ぎていた。

それが功を奏したんだ!



姉が逝ってから四年も経ってしまった。

(いつまで旅行してるんだろ…)

と、いまだに思ってしまう。

 

現実に戻れば、そこには姉はいない。施設に入った母にもコロナ禍で会えない。

妹とふたり、淋しさで黙り込む。

 

今年も残すところ二ヶ月足らず。

金太郎飴のようにどこを切り取っても真面目一徹。わたしと妹のお手本だった姉に、せめて胸を張れるのは、

(そこまでやるんかい!)

の頑張り。

ただね…

もう少し力を抜いたらいいとは思っているんだけど…

力を抜くのはほんとうにむずかしい。

まわりに心配かけてしまうって分かってるんだけどね…

 

 

 

黄色いレモン、そろそろ収穫しようかな…