森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

いとしのベリー

わが家にはブルーとブラックのベリーがある。

 

 

 



もうずいぶん昔のこと。

 

仕事から帰ってきたわたしは、居間でのんびりテレビを見ていた。

(ん?…)

何気なく目を上げると、青い煙のような靄(もや)がかかっている。

(あれ?なんだろう…?)

部屋全体が青くぼんやりとしている。

なんだか幻想的…

次の瞬間、青い煙は消えた。

 

次の日。

仕事をしていると、突然!(ほんとに突然)目が痛くなった。

「痛い!痛い!」

仕事どころではない。車の鍵を掴むと

「す、すみません!眼科に行ってきます」

と会社を飛び出した。

 

眼科の先生が顕微鏡を覗きながら、

「これじゃあ痛くて目開けていられなかったでしょ」

目がカラカラに乾燥して、ドライアイになっているらしい。

 

目薬を注してもらうと、あら!不思議!

あっという間に痛みから開放された。

「あーよかった!」

大急ぎで会社に戻った。

 

それがドライアイの始まりだった。

夕方に煙が見えた…と思ったら、次の日必ず目の激痛に襲われた。

車を飛ばして、眼科に駆け込むというのを繰り返した。

煙とドライアイの因果関係は分からない。

 

それからというもの、目にいいと聞いて紫色の食べ物をせっせと食べた。

茄子に紫キャベツ、紫玉ねぎ、ぶどう。

(!!!)

(うちの庭にはブルーベリーがある!)

 

膝くらいの高さだったのに、いつの間にか大きく育ったブルーベリー。

見事な紫だよ!

ザルいっぱい収穫して、一回分ずつ小袋に入れて冷凍した。

そうやって長ーく食べ続けた。

おかげさまで、ドライアイはいつの間にか姿を消した。

 

「ブルーベリーが目にいいって言ってるけど、そんな効果ないんだってよ」

って息子は言うけど、笑顔で思い出話ができるようになったんだもん。

だから、それでいいじゃないか。信じるものは救われる…だよ。

 

今、収穫の時期を迎えているブルーベリー。

目にいいからというだけでない。甘酸っぱくてだいすき!



 

ブラックの方は、いつの間にか庭の片隅にひっそり…

フェンスに覆いかぶさり、あんなにも存在感を発揮していたのに。

 

 

姉とふたりで嬉々としてジャムを作っていた記憶がよみがえる。

姉がいなくなり、いつの間にかジャムを作ることも忘れていた。

 

だけど、今年は頑張ってジャムを作ってみようと思う。

「手間がかかるのよねー」

ってぼやきながら、ブラックベリージャムを作ってみようと思う。