2019年の12月、武漢で原因不明の肺炎の患者が見つかったというニュースが流れた。
「ふーん…」
まだその頃はわたしたちには関係ない話だった。
年が明けて2020年の1月。
日本で最初の新型コロナに感染した患者が見つかったというニュースに、たかが風邪くらいでずいぶん神経質になるんだなと思った。
2月になり今度は大型クルーズ船の乗客が、長い間船内で隔離されているというニュースを目にしたところで、これはただ事ではないと思い始めた。
それでも、まだ自分に関わってくることはないと高を括っていた。
『新型コロナウイルス感染症』と名前が付き、パンデミックとみなされたと発表されたところで、
(いったい何が起こっているのだろう…)
ようやく、対岸の火事ではないことに気がついた。
その後、あっという間に新型コロナは世の中に広がっていった。
春が来たら下火になる、夏には収束するなんて言われていたのに、一向に収まる気配はなく、また冬が来て春が来て、二回目の夏も過ぎていった。
「ワクチンなんか怖くて打たないよ」
と言っていたわたしは、もう三回目のワクチンも終わった。
毎月高血圧の薬をもらいに通う病院でも、緊迫した空気が流れているのをひしひしと感じる。待合室が模様替えされて、椅子が並んでいる。夕方になるとワクチン接種が行われるようだ。
誰もかれもがマスクで顔を覆い、知り合いに道で会っても素通りしてしまう世の中を嘆く毎日。『緊急事態宣言』『まん延防止等重点措置』って、長く生きてきて初めて聞いたわ!
4月になったら第7波が来ると言っている。
コロナ前の日常が懐かしい。
「なんて平和で幸せな日々だったんだろう…」
今更ながらに、平凡な日常のありがたさを噛みしめる。
それだけではない。
世界も大変なことになっている。
ロシアによるウクライナへの侵攻のニュースだ。
侵攻は現実に起こるのか…いや、そこまではならないだろう…希望的観測はあっさりと覆され、連日テレビのニュースに映し出される現実に、誰もが言葉を失っている。
世界の何処かで起きていることも、対岸の火事ではなくなっている。
わたしたちはどこへ向かっているのだろう…