森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

密です密です

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朝、ゴミを捨てに出たついでにそのままウォーキングに出発した。

 

突然思い立ったので、ウォーキング用の靴も履いてないしマスクもしていない。

空気があんまり気持ちよくて、ついこんなことになってしまった。

 

歩き始めたわたしの頭の上を、向こうの空から五、六羽の鴨がバッサバッサと飛んできて、川に一直線。呆気にとられているわたしの前で見事な着池を見せた。

水が揺れる、揺れる…

着池した途端、鴨はアッという間に可愛らしい姿に変身して、優雅に泳ぎ始めた。

 

 

(鴨はいいねー…こころ和むわー…)

見ているこちらはこころ和むけど、このごろの気温の高さに鴨のほうは

(季節間違っちゃったかも…)

なんて思っているのではないかしらん…

 

鴨に見とれていると、そのそばで静かなさざ波が…

二メートル四方くらいの大きさで、水がきれいなさざ波模様を作って移動している。

……

そういえば、この川には鯉がたくさんいるのだ。

 

引っ越してすぐの頃のこと。

窓から見えた川の水の柔らかさに、誘われるように家を出た。

川をじっと見ていると、底の方で何やら動いている。

(何だろう?)

澄んだ水ではないので、最初は分からなかった。

じーっと見ていると突然、大きな口を開けた魚が見えた。

……

(鯉だ!)

そう気がついた途端、水の中で動き回っている鯉たちがはっきりと見え始めた。

あまりの数の多さに、びっくりして固まってしまった。

今はもう慣れたけど、初めて見たときは気味が悪かった。

 

それからは、川の横を歩く度に覗き込んで鯉のすがたを探してしまう。

鯉が好きだというわけではない。数に圧倒されて、ついつい見ずにはいられないのだ。

 

移動していくさざ波が、鯉のしわざかどうかは分からない。

川に見とれていて前方を見ていなかったわたしは、ふと視線を戻してびっくり!

すごい一団がこちらに向かって歩いてくる。

 

そういえば、この時間はウォーキングラッシュの時間だった。

川の横の道はまさに

「蜜です!蜜です!」

 

三年前には「蜜です!」なんて誰も言っていなかった。コロナが少し収まっている今、あまり聞かれなくなった。喜ばしいことではある…

 

と、のんきに考えていて、ハッと気がついた!

わたしはマスクをしていない!!

 

あれー!大変!

踵を返し、あわてて家に戻りました!