朝起きると、窓から空を見上げる。
(雨は降ってないな。よしよし!)
着替えると早速ウォーキングに出発。
川沿いを歩いて、その先の橋を渡ると神社に着く。
最初に六十段の石段が待っている。見上げてもひるんだりしないよ。ここまでと同じ速度でタッタッと登っていく。
(七十のおばあさんにしては上出来じゃない!)
誰も褒めないから、じぶんで褒めることにする。
石段を登り切り、境内に入っていくと季節の花や木が静かに迎えてくれる。歩いている人はたくさんいても、この時間に神社に上がってくる人はいない。
桜の季節には美しいピンクの花が空を覆い、気が付けば立ち止まって見上げている。その後、花びらは地面へと舞台を移す。空ではなく地面のピンクもいい。桜はやっぱり春の王様だね。それが終わるころ今度は
「いったいどこに隠れていたの?」
突然姿を現す濃い緑の中の真っ赤な椿。道の両側に続いていたのは椿だったのね。緑と赤、刺激的な色の組み合わせ。
秋は黄色のイチョウのじゅうたんを
「ごめんなさいね」
と言いながら踏みしめて歩く。最も鮮やかな黄色の葉っぱを三枚選んで、その朝の収穫として持ち帰る。
神社でお参りをすませると、反対側に出て穏やかな坂道を下っていく。
道の両側から迫る竹林の間を通り抜けながら、いつか夕方のニュースでみた『メンマ』のことを考える。
柔らかいのにシャキシャキとした不思議な歯ごたえ。美味しいメンマが特別な竹じゃなくても出来るらしい。
(竹林なら沢山あるし、メンマ屋さんできたらいいな)
(弟子入りして修行したら国産メンマ作れないかなあ)
(この辺りは名所名産がとんとないから、メンマ屋さん出来たら地域活性化に繋がるかも)
(メンマが無理なら、竹で何か商売出来ないものかしら)
歩きながら、見上げる竹に妄想が止まらない。
立ち止まって考える。メンマってラーメンにのせる以外にどんな食べ方があるんだろう?中華料理に入っている。あと…
うーん…思いつかない。
メンマ屋さんで商売は難しいか…
考えているうちに、家が近づいてきた。
限られた三十分なので、あっという間に過ぎてしまう。
続きはまた今度考えよっと。