森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

ジリジリ太陽の下、旗を振る女の子

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腰の具合は相変わらずです。いい時もあり悪いときもある。

 

どんなに気をつけても調子が悪いときは、毎日整骨院に行きたい。一日置きでもいい。

ところがね、それが簡単ではない。

 

歳をとると頭で考えてることが、すぐに行動に移せないのが大きな理由。

整骨院に行くと、たっぷり時間をとられる。その日に予定していることを頭の中で考えているうちにも時間がどんどん過ぎていくのに、ぐずぐずと腰が上がらない。

 

時計を見上げて

「あれー!もうこんな時間!」

と、後悔することになる。

 

だから、調子良くても悪くても水曜日だけは用事を入れないで、何が何でも行こうと決めている(特に理由はないのだけど、週の半ばだし、とにかく曜日を決めてないと行きそびれてしまう…)

 

 

やっと、重い腰をあげた。



灼熱の太陽に焼かれた車に乗り込んで、窓を全開にすると出発した。

ハンドルが熱くて、太陽の熱がジリジリ伝わってくる。

車内が冷えるまでそのまま走る。

 

ようやく暑さが落ち着いてきた。

 

前方で道路工事をしている。

誘導のおじさんがこちらに向かって旗を振っている。

 

いつも時間に追われているような気がするわたしは、「進め」か「止まれ」か分からない誘導をされると、途端に顔が険しくなる。

 

もっと、大きく腕を振ってくれないかな…

横目でおじさんを凝視しながら通り過ぎる。

 

(あれ?)

おじさんと思っていたのは、女の人?

 

よく見みると

若い女の子だ!)

真っ黒に日焼けした顔の中で目だけがクリクリ動いている!

腕の振りが小さいんじゃなくて、体が小さかったんだ。

 

上を見上げれば灼熱の太陽。その下で旗を振っている若い女の子…

事情があって炎天下で旗をふる仕事を選んだんだろうけど、それにしても…

長いこと生きてきたから、わたしもいろんな仕事をしてきたし、体裁も都合も関係なく稼がなければならない時期もあった。



水分はちゃんととっているのかな。トイレとかはどうするんだろう。

「ねえ、なんでこの仕事をしているの?」

つい聞きたくなるのをグッと飲み込んで、通り過ぎた。

 

「色は黒くなっちゃいますけど、この仕事気に入っているんです」

なーんて明るく答えられたりして…

「がんばってねー」

腰の痛さを忘れてつぶやく。

 

日陰もないこの炎天下でひたすら旗を振っている姿をバックミラーで追った。