香害に苦しんでいる人がいると新聞の記事で読んだ。
香害…?
何かで目にしたことはあるかも知れないけど、はっきりとその言葉を認識したのは初めて。記事によると香害がきっかけで『化学物質過敏症』という名前の病気を発症するひとが増えているらしい。
香水や合成洗剤、柔軟剤、入浴剤、芳香剤、化粧品…など、考えてみるとわたしたちは香りのするものに取り囲まれて暮らしている。テレビのコマーシャルではバラの香りとか、爽やかなミントの香りーとか盛んにいっている。
当たり前のように暮らしに溶け込んでしまっているそれらの香りを、避けて暮らすことが出来るのだろうか。
三十代の終わり頃、アパートに引っ越した時のこと。
建ってから長い年月が経過した団地は、見た目にはまだ綺麗だったけれど、時の流れを感じさせる部屋全体に漂うムッとする空気感。
窓を全開にして風を入れると、それぞれの部屋を見て回る。
台所の流しの下を開いてみると、何やらすごい臭い。
「ワッ!臭い!」
荷物を片付ける前にスーパーに走った。お茶の香りがするという芳香剤を買ってきた。ところが、臭いが半減するどころか芳香剤の香りと混ざってすごいことになった。
もう一度スーパーに走り無香料のものを買ってきた。今度は無香料という人工の臭いが気になった。結局、芳香剤はやめて流しの下を徹底的に掃除した。
臭いを匂いで消そうとしても、逆効果なのかも知れない。
「トイレの芳香剤はやっぱり必要だよね」
と買ってきても、ドアを開ける度に強烈な匂いが気になりだんだん買わなくなった。
香水は苦手。入浴剤は貰い物があった時お試しで入れてみるけど、その後は使わずに忘れ去られることになる。
「匂いには敏感なのー」
と言っていた自分がちょっと恥ずかしい。苦手だから匂いのするものは買わないでおこう!という程度で済んでいるわたしは幸運だった。
この病気は、今日大丈夫だからといって明日も大丈夫だとは言い切れないらしい。
「わたしには関係のない話」
ではないというのが怖い。
「誰もが被害者にも加害者にもなりうる深刻な問題だと思って欲しい」
と、あった。
そんな病気で苦しんでいる人がいるというのを心に留めておきたい。