森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

跳ねる銀鱗!イワシが踊る

 

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魚をよく食べる人は認知症を発するリスクが低いとニュースで言っている。青魚に含まれるEPAやらDHAやらビタミン12それから、それからなんかいろんな成分が脳にいいらしい。

じゃあ!わたしも魚食べなくちゃ。

 

ここ最近のじぶんの記憶力に自信がない。何かしようと立ち上がった途端

(あれっ?何をするんだっけ)

もう一度座ってみる。

(そうだった!そうだった!)

思い出せるならまだいい。座りなおしても思い出せずに

(まっいいかー)

ということがだんだん増えてきた。

そんな日常に気がつかないふりをしているこのごろ。たまたまテレビを見ていてよかったー!

 

こどものころ食卓にあがるのは野菜と魚ばかりだった。その中でも青魚の代表といえばイワシ。見慣れた食材だったイワシは、今ではサンマやサバと同様に財布の中身と相談しながら

「うーん…」

買おうか、今日のところはがまんしようかと迷う食材になった。青魚よりお肉を買った方が種類が豊富で安価なのだ。

 

毎日魚を食べるのは無理だとしても、ここは小さな(大きなかな?)決断をする。わが家では月曜日と火曜日は”魚を食べる”とルールを決めた。それ以外の日も、魚が手に入ればもちろんありがたくいただく。

 

週に二日じゃなくて、毎日でも食べたいと思うのは歳をとった証拠かな。つい最近まで

(お肉のほうがいいー)

と思っていたのに。

 

 

そこで

今日はイワシにまつわる思い出ばなし。

小学校の遠足で(簡単に言っているけど、半世紀以上も前の話ね)たしか、小学校五年生だったと思う。

遠足で一時間半くらいかけて海まで歩いた。

(夏になると家族で海水浴に出かけるおなじみの場所)

今のように車に乗るのが当たり前ではないので、一年生になったばかりの小さな子もよく歩く。

「あー!着いた着いた」

水筒のお茶を飲み、岩場に腰かけて海を見ながらみんなで休憩をしていた。

 

すると、突然目の前に広がる海がキラキラと輝きだしたのだ。何かが跳ねている!

「なんだ!なんだ!」

水筒を片手に先生も生徒も立ち上がって海の方に目を凝らした。

 

イワシの大群だ!」

一人の先生が叫ぶと、他の先生たちも生徒そっちのけで海へ走り出した。

それからは先生と生徒が一緒になり、あちこちでイワシ素手で捕まえようと大騒ぎ。

一人の先生が呆然と突っ立っているわたしに、手で捌(さば)いたイワシ

「ほれ!うまいぞ!」

と差し出した。先生も美味しそうにイワシを口に放り込んでいる。

 

新鮮なイワシの美味しさを知った今のわたしなら、ためらわなかっただろう。だけど、そのころ魚を刺身で食べるなんて、わが家の日常にはなかった。手のひらのイワシを見つめたまま、どうしても口に入れることができないわたしは、先生に気付かれないようにそーっと海に捨てた。

 

イワシがもっとも庶民の味だったころのお話し。

あーあもったいなかった!