森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

くるいざき

 

この家に越してきたとき、庭に花があるのが嬉しくて用事もないのに何度も庭に降りたものだった。前に住んでいた方が、とても花好きだったらしい。

名前も知らない花が次から次に顔を出した。

 

わたしは妹と違って、花も野菜も植物はとんと分からない。

新しい花を発見するたびに

(これは何という花?)

妹をつかまえては聞いていた。

 

あれからもう十五年以上経つ。

不思議なことに、今でも目新しい花が咲くことがある。

(あなたたち、今までどこに隠れていたの?)

新しい花の発見は驚きであり楽しみでもある。



庭の真ん中に、椿だかサザンカだか分からないけど(たぶんサザンカ、いや…やっぱり椿かな…)、幹がどんどん成長して太くなった。

花芽はチラホラ。チラホラでも色が真っ赤で鮮やかだから、花芽を見つけると

(早く咲かないかなー)

と、心待ちにしたものだった。

 

去年、今までにないくらいたくさんの花が咲いた。

形を整えようと、剪定したのがよかったのか…

それで気を良くしていたら、今年は更にたくさんの花が。

ここまでくると、ちょっとやり過ぎ…

 

 

 

じーっと花を見つめて、ふと思った。

くるいざき!

こんなふうにくるいざきたい…

 

という、時代はずっとむかしに通り過ぎた。

まわりの声なんか気にせず、じぶんの思いにまっしぐら!

そんな時代のしあわせが、今なら理解できる。