森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

流れる雲のように

 

女優の財前直見さんがいろんな野菜を前に、喜々として動き回っている姿がテレビで流れていた。場所がどこだったかは忘れたけど、両親と田舎暮らしをしているらしい。

収穫した野菜を料理したり漬物にしたり、それはそれは楽しそう。

女優さんだと、地味なエプロン姿でも絵になるね。

 

仕事を辞めたら、体が元気なうちに田舎暮らしをしたいと思う人って、たくさんいるんだろうな。

わたしの妹も

阿蘇に帰って畑を耕しながら暮らしたい」

と若い頃からよく言っていた。

 

それを聞く度に、街の暮らしを捨てられないわたしには

(時々遊びに行くのならいいけど、暮らすのは無理…)

と首を振る。

子供の頃から大人になるまで、華やかに見える妹を羨んでいた。

気がつけば妹はひたすら土を見つめ花を愛でるひとになっていた。

 

わたしの方は、本に囲まれダンスを楽しみ映画の世界で、現実を忘れる暮らしをしてきた。

一生懸命仕事はするけど、仕事をするエネルギーと同じ量の、自分が楽しめることを大切にしてきた。

そうやって生きてきたけれど…思い描いていた未来図とはどうも違う場所にいる。

 

到達してみないとわからないもんだね。

ただね…

だからって今を悲観しているのではないよ。

流れに逆らわずに身を委ねた。これはこれでいいのだ。

仕事が終わって流れる雲を笑顔でながめる…

(これでいい…)

そう思えることこそが歳を重ねた末のご褒美だ。

 

だから、一日を精一杯生きていると思える今日をこれからも大切にするよ。