森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

そこにいたのね!鴨一家

 

ある日のこと。

橋の上を運転していた。

この下に流れる川は一級河川。架かっている橋も絵になる大きさ。

目の前(というより、目の上かな)は、自由気ままに動き回る雲。

少し視線を下げれば、橋を照らす照明灯が映画のワンシーンのように並んでいる。

女優にでもなった気分で優雅に走るわたし(…?)

 

前方に工事車両が見える。ちょっと渋滞気味だと思ったら工事中だったのか。

時間には余裕を持って出ているからあせったりしない。

見るともなしに、橋の欄干のすき間から見える川を眺めた。

 

小さな黒い点が動いている。

(あれは…?何が動いているんだろう…)

 

川から橋まではずいぶん高さがある。

小さな黒い点の正体を見極めようと、必死で川を見つめた。

のろのろ運転に加えてさらにのろのろ…

(後ろの車があせっているだろうな)

(すみません…)

とは思うものの、気になって仕方ない。

 

………

(あれって!もしや?)

鴨の群れか?

あの行方の知れない鴨ちゃん親子なのかも。

(ここに引っ越ししてたのー!)

 

あの小さな川から、こんな大きな川に引っ越すにはどんなに勇気がいっただろう!

後ろの車のことなんか忘れて、鴨を見ようと身を乗り出すわたし。

(よし!とりあえずは行方がわかった。仕事が終わったら確認にくるからね!)



仕事をしながら考えた。

なにか事情があって、勇気の引っ越しをしたと思いこんでるけど、本当にそうなのか?

もともとあの小さな川にもこちらの大きな川にも、当たり前にいたんじゃない…

そう考えてみると、そんな気がしてきた。

 

過保護な親のように心配していたけど、鴨ちゃん親子は川さえあればどこででも逞しく生きていた…

 

いらないお世話だったか!

チーン!

親はいつまでもこどものことを心配するけれど、親が思っているよりずーっと大人になっていてるもんだよ…と言われた気分。

(って、鴨のはなしだったよね…)