ある日のこと、部屋の中から庭を眺めていた。
(たまには、草取りでもして妹をびっくりさせようかな…)
そう思い立つと、長袖シャツに軍手。庭用の長靴を履いて外に出た。
張り切って草取りを始めた。
実は草取りは大好き。大好きだけど、腰痛持ちのわたしにはとても辛い作業なのだ。
草取りの後には必ず、整骨院行きのコースが待っている。
今日は、それでもやりたい気持ちが勝った。
綺麗になっていく庭にご機嫌のわたしは、草取りの手が止まらない。
(気持ちいい…)
夢中のわたしは、無我の境地になっていた。
突然、
(あれ!?天地が逆さまになった!)
気がつくと、ブロックに足をかけたつもりで、実は踏み外してしまったらしい。
足首も痛いけど、頭も痛い。転んだ拍子に頭を打ったようだ。
「アイタタ…アイタタ…」
しばらくの間寝転んだまま、きれいな空を眺めていた。
静かな昼下がり。わたしの異変に気がつくひとはいない。
ゆっくりと起き上がり、とぼとぼと部屋に戻った。
(どうしようかなー)
足首も気になるけど、打った頭が心配。しばらく思案していたけど、やっぱり不安をかかえたまま過ごすのは無理。
のろのろと着替えると、いつも行く脳神経外科に向かった。
今日は珍しく庭で草取中だったけど、普段の生活で何故か頭を打つ事故がとても多いわたし。一番多いのは車のドアを開けるとき。
なぜそうなるのか自分でも分からないけど、ドアを開けようとすると頭がぶつかるのだ。
ドアを開ける時のわたし独特の癖?
おでこのすぐ上のところに小さなコブがある。必ず同じところを打つので、コブが消えることはない。さいわい、髪でかくれているけど。
冷静に状況を再現しようとしても、ドアの先が頭にぶつかることはない。
『災難は忘れた頃にやってくる』
ぼんやり車のドアを開けようとすると、ある日突然
「ガン!」
「MRI検査お願いします」
大体二年に一度、脳神経外科の門をくぐる。
「はい、大丈夫ですよ。前回と同じ。心配ないよ」
頭をぶつける度、転ぶ度にMRIを撮りに来るので、わたしのデータはしっかり揃っている。
「何も異常なし。小さな梗塞の数も年齢相応。心配ないよ」
ときには、左頭の痛みに耐えきれず来ることもある。
原因は分からないけど、頭の左側がキリキリ痛むのだ。痛みだすと一ヶ月以上キリキリが続く。その時も、もちろんMRI。
おかげさまで、わたしの頭の中は先生に聞けば、大丈夫かどうかすぐに分かる。
ありがたいことです。