森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

安物買いのセーターと毛玉取り

f:id:kiriri-nikki:20210627114421p:plain

 

昨年はコロナ禍で見送ったけれど、毎年暮れが近くなると、仲良し四人(昔の仕事仲間)で忘年会をするのが年末の楽しみ。

年齢はバラバラ。わたしが七十代目前(七十代って本当に驚いてしまう。いつの間になったんやねん!)五十代になったばかりの二人と、四十代半ばの女の子。女の子というにはもう厳しい年齢だけど、高校を卒業したばかりで、右も左も分からない十九のときから見ているので、未だに女の子と呼んでしまう。

 

一昨年の話。

忘年会の日時が決まって、早速クローゼットを覗いてみた。

さて、着ていく服があるのかしらん。

おしゃれして出かける機会がめっきり減っただけでなく、どうせ着ないからと片っ端から処分してしまったのを後悔。

左から右へ順番に見ていく。これもダメ、あれもダメと次々に却下していたら、何回繰り返しても着ていく服が決まらない。

 

 

「よし!買いに行こう!」

何年ぶりかで洋服を買おうと勇んで出かけた。

予想通りというか、覚悟していた通り洋服選びは難航して、疲れ果ててベンチで休憩。

傍らには妥協の産物のセーターが一枚。グレーに銀のラメがポツポツと入っている。値段は1,980円。安いのが気になるけど仕方ない。

(もう、疲れちゃったわ)

 

ものすごく高いか、これは買っても大丈夫かなと迷うほど安いか。

「中間(ちゅうかん)の値段のセーターはないのか!」

と、ブツブツ文句を言いながら帰ってきた。

 

さて、ラメのセーターは着てみるとまあまあの雰囲気。

ちゃんと化粧をして、ピアスを付けると颯爽と出かけた。

一人は遠方から来るので、

「久しぶりー!元気にしてたー?」

から始まり、一年ぶりの距離が縮まると、いつもの他愛のない話に盛り上がった。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

JRの駅まで見送ると、一年後の再会を約束して別れた。

 

次の日、楽しかった前夜のことを思い出しながら、椅子の背にかかっているセーターに目をやった。

(これは…?いったい…)

ラメのセーターがものすごい毛玉に覆われている。

(どういうこと?)

いちどしか着てないのに、これだけの毛玉が出来るものだろうか?

目が点になったまま考える。酔っ払ってセーターをなでなでしまくったのかな?

 

………いくら考えてもわからない。

 

あー これが安物買いをした結果なのね。

 

タンスを引っ掻き回して毛玉取りを探す。ない!百均に買いに行く。

帰ってきて黙々と毛玉取りを始めた。

ぜんぜんダメ!百均の毛玉取りでは埒(らち)が明かない。

 

もう一度店へ走る。五百円くらいの毛玉取りを見つけた。これなら大丈夫かな。家に帰ると早速とりかかった。

ふんふん!調子よく毛玉が取れる。

と、思ったけどよく見ると毛が寝ているだけ。カッターナイフなら取れるかな。いやいや毛が切れちゃうでしょ。

どうやっても、こうやってもセーターは復活しません。

 

(後日、悲惨な姿になったセーターは廃棄処分されました)