昨年はコロナ禍で見送ったけれど、毎年暮れが近くなると、仲良し四人(昔の仕事仲間)で忘年会をするのが年末の楽しみ。
年齢はバラバラ。わたしが七十代目前(七十代って本当に驚いてしまう。いつの間になったんやねん!)五十代になったばかりの二人と、四十代半ばの女の子。女の子というにはもう厳しい年齢だけど、高校を卒業したばかりで、右も左も分からない十九のときから見ているので、未だに女の子と呼んでしまう。
一昨年の話。
忘年会の日時が決まって、早速クローゼットを覗いてみた。
さて、着ていく服があるのかしらん。
おしゃれして出かける機会がめっきり減っただけでなく、どうせ着ないからと片っ端から処分してしまったのを後悔。
左から右へ順番に見ていく。これもダメ、あれもダメと次々に却下していたら、何回繰り返しても着ていく服が決まらない。
「よし!買いに行こう!」
何年ぶりかで洋服を買おうと勇んで出かけた。
予想通りというか、覚悟していた通り洋服選びは難航して、疲れ果ててベンチで休憩。
傍らには妥協の産物のセーターが一枚。グレーに銀のラメがポツポツと入っている。値段は1,980円。安いのが気になるけど仕方ない。
(もう、疲れちゃったわ)
ものすごく高いか、これは買っても大丈夫かなと迷うほど安いか。
「中間(ちゅうかん)の値段のセーターはないのか!」
と、ブツブツ文句を言いながら帰ってきた。
さて、ラメのセーターは着てみるとまあまあの雰囲気。
ちゃんと化粧をして、ピアスを付けると颯爽と出かけた。
一人は遠方から来るので、
「久しぶりー!元気にしてたー?」
から始まり、一年ぶりの距離が縮まると、いつもの他愛のない話に盛り上がった。
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
JRの駅まで見送ると、一年後の再会を約束して別れた。
次の日、楽しかった前夜のことを思い出しながら、椅子の背にかかっているセーターに目をやった。
(これは…?いったい…)
ラメのセーターがものすごい毛玉に覆われている。
(どういうこと?)
いちどしか着てないのに、これだけの毛玉が出来るものだろうか?
目が点になったまま考える。酔っ払ってセーターをなでなでしまくったのかな?
………いくら考えてもわからない。
あー これが安物買いをした結果なのね。
タンスを引っ掻き回して毛玉取りを探す。ない!百均に買いに行く。
帰ってきて黙々と毛玉取りを始めた。
ぜんぜんダメ!百均の毛玉取りでは埒(らち)が明かない。
もう一度店へ走る。五百円くらいの毛玉取りを見つけた。これなら大丈夫かな。家に帰ると早速とりかかった。
ふんふん!調子よく毛玉が取れる。
と、思ったけどよく見ると毛が寝ているだけ。カッターナイフなら取れるかな。いやいや毛が切れちゃうでしょ。
どうやっても、こうやってもセーターは復活しません。
(後日、悲惨な姿になったセーターは廃棄処分されました)