森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

爆食い事件

 

生後間もないワンちゃんがわが家にやって来たのは2005年のこと。

その風貌からおじいさんを想像してしまうけど、間違いなく女の子。

元気の出ないわたしを心配した友人が強引に連れてきた。

 

自分のことでいっぱい。

犬を飼うなんて

「ない!ない!」

「無理!無理!」

あり得ないことだったのに…

もうそこにいる。



仕事から帰ると、手のひらに乗るような小さな犬が玄関でお座りをして待っていた。

強引に家族になった犬を見つめるわたし。

部屋に入ると、(当然のことかー)あちこちに粗相の跡が…

 

(これはー…何とかしなくちゃ…)

落ち込んでいる場合じゃなくなった。

 

わたしのこころの中で、その存在が大きくなっていく小さな犬。

名前は『桃』にした。



ある日のこと。

仕事から帰ってみると、桃の姿がない!

「あれー?どこにいるんだろ?」

カバンを放り出して、ソファーの後ろや押し入れの中を見ても

いない…

 

台所に行ってみると、ベランダに出るドアが開いている…

「ここに居たのー!」

飛び出したわたしから目をそらすようにそっぽ向いた桃。

 

急いで抱きかかえようとして

(何?この感触…)

お腹のあたりがゴツゴツ…硬い!

こわごわ覗き込んでみると

まるで薄い袋の中にパチンコ玉がぎっしり詰まっているように見える異様な腹。

(わっわっわ…!?何、このお腹…)

 

ベランダを見渡すと、倉庫のドアが開いている。

(あー!)

驚いて絶句するわたし。

袋の口が無残に開けられ散乱したドッグフード。

 

「どんだけ食べちゃったのよー!」

三キロ入りのドッグフードの袋がぺしゃんこになっているじゃないか。

自分の体重の何倍もの量を食べ続けた桃!



わたしの心配をよそに、一日に何度もウンチを出し続けた桃。

十日間ほどでようやくパチンコ玉(!)を出し切った。

それにしても、お腹もこわさず元気に走り回っていたけど、あの小さな腹の中はどういう構造になっているのだ?

 

桃の爆食い事件でした。