森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

きびなご

 

むかしと違って、野菜はJAに買いに行く。

なぜって新鮮さが違う。

住んでる地域の農家さんが育ててるというのもいい。

食べざかりの子供はいないし、スーパーで目の色変えて安さを求める時代は過ぎた。

 

わたしは名前を記憶することがとっても苦手。妹は

「○○さんのトマトが出てる!○○さんのトマトは美味しいよ!」

「△△さんのキャベツだ!買っとこう!」

お気に入りの農家さんの野菜があると勧めてくれるけど、

何度聞いても

「ふーん…」

 

今日は柔らかそうでみずみずしいキャベツがあったので迷わず買った。

JAというと野菜のイメージだけど、魚だって充実している。

ショーケースをのぞくと

”鹿児島産きびなご”

(きれいだなー!)

思わず手にとった。

家に帰ると早速料理に取り掛かる。

料理といっても頭と腸をとって、親指と人差し指で骨を一気に外すだけ。

小さくて数が多いから面倒だけど、絵を描くように盛り付ける。

 

三十年以上もむかし、お隣の奥さんが教えてくれたきびなごの刺身。

今は疎遠になって会うこともないけど、きびなごを見るとその人を思い出す。

 

冷蔵庫でキンキンに冷やして食べるきびなごは、とっても懐かしい味がした。