森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

飼い主さん!あなたを見上げていますよ!

   

 

 

ある日のこと。

運転していると、女の人が犬の散歩をしていた。

(可愛いなー!)

見とれながらゆっくり通り過ぎた。

ふと、あることに気がついた。

 

飼い主さんは、右手にリード。左手は…何も持っていない。

(そのワンちゃんは散歩だけで、ウンチはしないの?)

目の前でウンチを放置されたわけではないから、注意できるわけもなく…

目の前で放置されても、注意するのはなかなか勇気のいることで…

 

散歩をさせていて、ちゃんと片付けをする飼い主さんて、どのくらいいるのかな…

ここは田舎町。畑や原っぱも多いから、その辺の草むらにワンちゃんがウンチをしても、見ないふりをする飼い主さんが多いのだ。

で、それを目撃しても注意する勇気のない人もたくさん…

わたしのように…

ワンちゃんを見てホッコリしたと思ったら、自己嫌悪ですごすご帰るわたし。



何年か前の出来事。

爽やかな天気に誘われて、庭に出たわたしはいつの間にか草取りを始めた。

腰の具合と相談しながら、ひとり黙々と草をむしっていた。

 

我が家の庭は道から二メートルくらい高くて、道を歩く人を上から見下ろすような感じになる。草取りに夢中になっているわたしの目の前に(目の下に…かな)突然かわいい洋服をきたワンちゃんが現れた。生垣のすき間から垣間見えてる…という感じ。

犬種は分からないけど、雑誌に出てくるような可愛らしい犬だ。

可愛いらしくてもウンチはする。

わたしが見とれていることも知らず、突然ウンウンと頑張り始めた。

リードの先には、これまたオシャレな洋服のお姉さん。

 

やがて、ワンちゃんが用を足すとその場所からワンちゃんとお姉さんが消えた。

(えっ!?)

(その、残されたウンチはどうするのー?)

 

「すみません!おたくのワンちゃんがしたウンチ片付けないんですか?」

咄嗟(とっさ)に立ち上がり、お姉さんに声をかけた。

帰りかけていたお姉さんとワンちゃん。

まさか、目の前で見ている人がいるなんて思わなかったであろうお姉さんは、目をまん丸くして道からわたしを見上げた。

 

しばらく経ってから、家の外で大きな声がするのが聞こえる。

(何の騒ぎかな?)

草取りが終わって家の中にいたわたしは、いつまでも声がするので庭に出てみた。

生垣のすき間から、先程のお姉さんがわたしを見上げてものすごい形相で叫んでいた。

「ちゃんと片付けましたからね!」

「確認しなさいよ!」

同行したワンちゃんが、申し訳なさそうにわたしを見上げていた。

 

勇気のないわたしも、咄嗟の行動だと出来てしまった貴重な体験です。

飼い主さんもワンちゃんが見上げているのを、こころに留めてね!というお話でした。