森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

幸雲街道 

 

見上げると、そこに広がっている空はひとつなんだけど…

 

春まで働いていた職場は街なかにあり、自宅からは十五分くらいかけて通っていた。

すれ違う車もほとんどない一本道を走り抜けると、やがて国道を横切り駅やビルが立ち並ぶ街へと入っていく。

(どこらか湧いてきたの?)

と思うくらいゾロゾロと行列を作って歩いている高校生や大学生。

若さに見とれながら信号が変わるのを二回ほど待った先に職場はあった。

都会ではないけど、街に出てきたーっていう感じ。

 

そこに通っていたころ、空を見た記憶はあまりない。

見てはいたんだろうけど、思い浮かんでこない。

 

春に街なかから自然豊かな今の職場に変わった。

街ではあまり関心がなかった空を見上げる…

逆方向に走っただけなのに、空が変わった!

 

(あー!なんてきれいな空…)

(空だけじゃない、動き回る雲も負けていない…)

後ろに車がなければ、停めて見とれていたい。

 

空は繋がっているのになー…

見えない道があって、街といなかをわけているみたい。

自由自在に空に絵を描いていた雲が

「はい!はい!目をそらさないで、よーく見ててね」

と、微笑む。

 

もしも、もしもだよ…雲の道があるとしたら

”幸雲(こううん)街道”

そんな名前がいいかな!