森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

医学の進歩

 

営業さんがくれたショートケーキを隠してロッカー室に急いだ…

一つ年上の先輩と顔を見合わせ、笑顔で大口をあけた。

 

次の瞬間!!

……

あれ!口が動かない…

ケーキを握りしめ、涙目で先輩を見つめた…

 

1971年 顎(あご)が外れた。。。

 

それからというもの、あの恐怖の瞬間が訪れないように

気をつけながら生きてきた。

 

だのに…

だのに…

三十数年後、またも…口が開かなくなった。

 

紹介状を手に歯科大学病院を訪れたわたしは、顎の骨を削るために入院した。

手術後、耳の横にはカメラを入れるための穴と顎の骨を削るための穴が右左4つ開いていた。時間が経つと4つの黒い穴は、黒いシミになりそのうちに自然に消えていった。

「初めて顎が外れた時にこの手術をしてもらえばよかった」

主治医に言うと

「いや、その頃はこんな手術は出来なかった」

(ほぉぉー…)

……

医学の進歩にしみじみ感謝した。

 

 

その手術をしてから二十年ちかく経っている。

医学は更に進歩していることだろう…