森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

うちで観てもすごい!

 

かつて

映画は映画館で観るものだと決めていた。

家だと映画に集中できない。

「昼間の誰もいない時間に観ればいいじゃん」

「セールスが来ても居ないふりすれば…」

(それはそうなんだけど…)

 

ところがこの歳になるとそうも言ってられない。

若かった頃のように思い立ってもさっと行けないもの。

あれこれ雑用が頭をよぎるし、なによりパワーがない。

映画が始まる時間を調べて、仕事の段取りを考えて、車を運転して…

(終わったら夕ご飯はどうするかな…)

はあぁ…

きんに君のように

「パワー!」

って力こぶで押し切れない。

 

そんなこんなで今日は朝一番の大事な用事を済ませると、テレビの前に座ってPrime Videoを楽しむことにした。

観るのはもちろん『トップガンマーヴェリック』

 

音楽が聞こえてきた途端、気分が上がってきた。

(家で見る映画どうなんだろう…)

と思っていたけど意外にもいい。

映画館の空気感とは違うまた別の新鮮な気持ち。

何より劇場じゃなくてもトム・クルーズの魅力は半端なかった。

 

始まるといきなりマッハ10に挑むシーン。

地球を俯瞰するダークスター。

その下に広がる雲。

わたしたちが見上げている青とは違う宇宙に広がる青の世界。

暗黒と青の世界を二分する真ん中を超音速で駆け抜けるマーヴェリック。

そのシーンを眺めているだけで

(もう充分楽しんだよ!)

という気持ちになる。だけど映画はこれからが本番。

こんなドキドキハラハラのときめきを二時間強。

Prime Videoさん、感謝です!

マーヴェリックにまた会える!

 

つい何ヶ月か前のことのように感じるのに…

何度も映画館に足を運んだのはもう二年前のことだ。

月日が流れるのは…うーん、速い…

 

あれからいろんなことがあった。

一日一日を悔いのないように過ごせているだろうか…

………

 

そうそう…

今日はマーヴェリックのはなしだった。

 

二年前の五月に映画が公開されると、時間をみつけてはいそいそ映画館に足を運んだ。

何度見てもワクワクが止まらない!

「いい加減にしたら…」

と言われてもやめられない。

こんなに好きだと思えるものを持っている幸運。

 

トム・クルーズの限界を突破しようとするエネルギーに魅せられ続けている。

膨大な準備に何年も時間を費やし、自分の身体の極限にも挑戦する。

映画が始まってすぐの空母から戦闘機が飛び立つシーン。

このシーンだけでも永遠に見続けられる…と思ってしまう。

映画にはトム・クルーズの自家用機も使用して撮影されたという。

あんなもの持っているなんて、ほんと想像がつかないね。

 

夢の世界のひと。

実際にそんなひとが身近にいたら、どんなだろ…

やっぱり疲れるかな…

 

バイクで疾走する姿に、

「さあ、いよいよはじまるぅー!」

恋愛模様もありつつの魅力いっぱいの『トップガンマーヴェリック』

全編に流れる音楽に興奮をかきたてられ物語が進んでいく。

 

 

続編も検討されている…なんて情報をみたら期待してしまうけど、そのときトム・クルーズはいったい幾つやねん…体持つのかな…

 

Prime Videoで見れるようになりました。

仕事の疲れと闘いつつ、マーヴェリックに酔いしれる夜を過ごすよー

問題はそれ?!…

 

玄関のドアがガタギシになったのはいつからだろう…

閉めようとすると…抵抗するんですよ。

ガタガタガタ、ギシギシギシ

引っ張っても閉まらないから

「ふんぐぅぅー…」

と、力をこめる。

ガッシャーン…大きな音をたてて閉まる。

 

 

(だれか直せる人いないかなぁ…)

いっつも考えていた。

 

そうだ!!

以前勤めていた会社の改装をしていた大工さんの顔が浮かんだ。

 

連絡するとすぐに駆けつけてくれた。

だけど(案の定)ドアを開けたり閉めたり眺め回していたけど原因は分からないよう。

何日かして

「ドアを交換したほうがいいかも…」

と見積書を持ってきた。

 

!!

金額を見て驚いた。

五十万を超えるとは思ってなかった。

見積書を見つめて呆然としているわたしに一生懸命説明する大工さん。

(たかがドア一枚に…?)

(一番安いドアでいいんだけど…)

(工事費込みだとそうなるのかな…)

(古い家に似合わないかも…)

・・・・

 

頭の中ではすでにどうやって断ろうかと、思考がシフトしている。

「ちょ、ちょっと考えます」

一旦帰ってもらった。

 

その後何度も連絡があった。

そのたびに思い切って頼もうかな…

いやいや優先順位はドアではない…

そんな大金使うならほかにもやりたいことがある。

 

決心がつかない。期待させるのも胸が痛い。

電話をもらうのもつらくなってきたある日、思い切って断った。

 

だけど、問題は解決していない。

ドアを閉めるたびに、ギシギシうなるドアがうらめしい…

無理やり閉めるから、家が揺れる。

ため息つきながら過ごしていたある日、突然ひらめいた。

 

(鍵穴にKURE 5−56でもさしてみようかな…)

物置から探し出してきた赤い缶。

おもむろに蓋を開けると、鍵穴にプシュプシュ!

えーい!この際だ!もっとさしちゃえ!プシュプシュ!

 

 

(さし過ぎたらまずいかな…)

ハッと我に返り手を止めた。

 

台所に戻ったわたしはコーヒーを飲むためにお湯を沸かし始めた。

コーヒーを飲み終わるとドアのことを思い出して玄関に戻った。

ドアを開けて閉める。

もう一度開けて閉める。

何の抵抗もなくドアが開閉してるじゃない!

 

誰もいない玄関で雄叫びをあげた!

「問題はそれだったのかーい!」

 

 

春が翔(か)ける

 

 

二、三日前まで川には子ガモの姿があった。

いつも三羽ではしゃいでいるのが微笑ましかった。

今日は姿が見えない。

親鴨も離れたところでのんびり泳いでいたのに、どこを見渡しても姿がない。

 

 

あっ!

ぽつんと一羽…

 

朝から冷たい雨が降っていた。

北へ帰る日がきたのだろうか…

サンサンと陽がさしたり、冷たい雨が降ったり、こうして季節は移っていく。

 

 

 

春が来てた!!

 

 

今日はなんだかとても疲れた。

仕事はいつもにくらべて楽だった。

なのに…

 

駐車場をとぼとぼ歩いて車まで行った。

運転席に座って

(さてと…)

 

さてと…って考えなきゃいけないことがあったわけじゃない。

と、いう事に気がついて仕方なくエンジンをかけた。

いつもと逆の出口に向かった。

 

!!!

視線の先が真っ黄色!

菜の花畑がひろがっていた!

車を降りて黄色の畑まで駆けた。

 

 

畑の中で

じっと春を感じた。

自然の逞しさにことばを失うね…

災害に苦しみ続ける人びとがいても世界は不穏でも

”そんなの関係ない”

 

こんなことしてていいのか…

こんなことしかできない…

そんな狭間(はざま)で今日も揺れながら生きつづける

医学の進歩 Part2

 

頭が重い…

ティッシュペーパーに手を伸ばすと勢いよく鼻をかんだ。

読みかけの本に視線を戻す。

それから何秒もしないうちに、また手を伸ばした…

 

屑かごがティッシュペーパーで溢れている…

どうやら無意識に鼻をかみ続けていたらしい。

 

最近二、三ページも読むとすぐに本を閉じてしまう。

(歳をとったから集中力が続かない…)

と思い込んでいたけど…

そうなのか?

 

鼻かみはだんだん激しくなり、頭が重いのは一日中になり、屑かごはいつもティッシュペーパーであふれている。

 

この情景…って

記憶にあるぞ…



1983年(ころだった…)

何か変…

身体中の水分が鼻に大集結したように、かんでもかんでも湧いてくる鼻水。

市立病院の耳鼻科に駆け込んだ。

蓄膿症と言われて驚いているわたしに、更に

「手術しますか?」

「手術したら完全に治りますか?」

「再発しないとは断言できませんが…」

(再発するかもしれないのに、そんなこわい手術しないわ…)

「いやです。手術はしません!」

 

それから怒涛の治療!

土曜日も日曜日も処置できるように計らってもらって、来る日も来る日も病院通い。

車の免許はまだ持ってなかったので自転車をとばして通った。

「あなたみたいな患者も珍しい!」

半年ほどたってきれいな鼻になったわたしに、担当の先生が笑いながら言った。

 

今わたしの体に起こっているのは、まさにあのときの症状だ。

また病院通いをしないといけないのか…

(はぁ…)

 

耳鼻科にネット予約して行ってみた。

診察はほんの何秒か。

パソコンの画面を見つめたまま

「薬出しときますから、一週間後もう一度診せて」

(それだけ?…)

 

一週間薬を飲んだら…

治った!

 

今の時代、せっせせっせと通わなくても蓄膿症は治るのか!

またもや医学の進歩を実感した瞬間!だった。

(大げさか!)

医学の進歩

 

営業さんがくれたショートケーキを隠してロッカー室に急いだ…

一つ年上の先輩と顔を見合わせ、笑顔で大口をあけた。

 

次の瞬間!!

……

あれ!口が動かない…

ケーキを握りしめ、涙目で先輩を見つめた…

 

1971年 顎(あご)が外れた。。。

 

それからというもの、あの恐怖の瞬間が訪れないように

気をつけながら生きてきた。

 

だのに…

だのに…

三十数年後、またも…口が開かなくなった。

 

紹介状を手に歯科大学病院を訪れたわたしは、顎の骨を削るために入院した。

手術後、耳の横にはカメラを入れるための穴と顎の骨を削るための穴が右左4つ開いていた。時間が経つと4つの黒い穴は、黒いシミになりそのうちに自然に消えていった。

「初めて顎が外れた時にこの手術をしてもらえばよかった」

主治医に言うと

「いや、その頃はこんな手術は出来なかった」

(ほぉぉー…)

……

医学の進歩にしみじみ感謝した。

 

 

その手術をしてから二十年ちかく経っている。

医学は更に進歩していることだろう…