森野きりりの漂流日記

容姿もダメ頭もよくない、おまけに性格も悪いと自分を否定することしかしなかった女の子が、人生の荒波の中で「いやいや何も取り柄がなくても大丈夫さー」ということに気が付いていく長い長いお話です

満月

 

フロントガラスの先に見える月がとても大きく見える。

(今日は満月だった…)

このまま帰るのはもったいない気がした。

 

家の近くまで戻っていたのに、Uターンしてスーパーマーケットでノンアルコールのビールを一本買うと、満月を見るために空き地に車を停めた。

 

シートを少し倒してプルトップを引いた。

”プシュ!”

月を見ながら静かにビールを飲んだ。

 

親しい友人と、会社の同僚と、何かの集まりで一緒になった人と、お酒を飲むシーンはいつも笑顔だった。こんなふうにひとりっきりで飲んだことってあったっけ…

 

寒い車の中では、冷たいビールはちっとも美味しくなかった。

12月の満月の夜に母が逝ってしまうなんて想像もしていなかったわたしは、11月の大きな月をながいこと見ていた。



”月夜の森の梟”では、満月の夜にウサギを見ている真理子さんがいた。

真っ暗な空に白く光る大きな月を見つめるその姿に、かけることばは見つからない。